戦慄く両足を肩に抱え上げる。白いシーツをきつく握り締める手から綺麗に伸びた腕の線を視線で辿り、紅く染まった首筋と潤んで揺れる瞳を見つめながら細い腰を掴んだ。微かに息を呑む音が聞こえる。組み敷かれる彼の名を呟くと、焦れて蠢く肢体に幾度目かの楔を打ち込んだ。
「ぁあ、あああっっ」
高くあがる嬌声ときつい締め付けに、眉目が顰められる。目元にかかる紅い髪を振って視界を創り、眼下でしなやかに身体を反らす様を眺めた。強烈な快楽と今すぐにでも突き崩したくなるような凶悪な欲求。蠢きだそうとする腰を確りと抱えて動きを封じたまま、大きく息をついた。ただそれだけの軽い振動にも悦を返してしまう身体が、また眼下で喘ぐ。
片手を伸ばし脇腹の後ろを撫で上げる。途端にびくりと戦慄く肢体に目を細めながら、できるだけ動かないようにして上体を倒した。
「これから……どうして欲しい?」
低い問いかけに、潤んだ青鈍の瞳が向けられた。喘ぐように幾度か唇を戦慄かせる。それでも、声は聞こえない。もう一度同じところを撫でると、小さく悲鳴のような声があがった。
「なんでも、してやるから……して欲しいこと、言えよ」
肌を撫でる手をさらに伸ばして、熱い吐息を吐く唇に触れる。軽く開かれたそれを指先でゆっくり撫でると、急いた風に舌が伸ばされた。つ、と指を潜らせて湿った口腔を弄る。微かにあがる水音に口元を歪ませて、絡みつく舌を振り切るように引き抜いた。その指を胸へとおろし硬く立ち上がる飾りを摘み上げる。零れる嬌声を心地よさげに聞きながら、もう一度促す。
「ぁ……っは…」
シーツを握り締める手の平からすうっと力が抜けた。ひたりと合わせられる瞳が酷く扇情的に見える。ふらり、と紅い髪に伸ばされる片腕を一瞥し、好きなようにさせた。やや遅れてもう片方の腕も伸びた。両手で頬を包み、どこかもどかしげに髪を梳き肌に触れる。
「…ー……ォ…ス、カ……ー…」
「なんだ」
片手を掴み、手の平に軽く口付ける。震える腕を撫でながら首を傾げる。なにか言いたげに開かれた唇を目にし身体をまた傾けると、さらに引き寄せようと頬を包む手に力が入った。
ぐ、と顔を近付けるとそれだけで刺激されるのか、溜息のような濡れた声があがった。蒼の髪に手を差し入れ梳いてやると、首筋が粟立ちまた掠れた嬌声が零れた。
吐息が触れるほど近くまで顔を寄せると、戦慄く唇から深い溜息が漏れた。
「キ…ス、して………」
口元が微かに笑っているように見えた。不意に、眩暈に襲われる。
軽い既視感。
引き寄せられるまま、唇を重ねる。薄く開かれた唇を撫で舌を絡ませる。混ざり合う吐息、絡みつく濡れた舌は果てしなく甘かった。
星の数ほどの経験を手繰り寄せてみても、これほどに惹き付けられる唇は無い。互いの蜜までも交わしながら、蕩けるような口付けを交わす。
「……ぁ…っ」
貪るだけ貪り、舌を吸い上げて顔を上げる。とろんと酔ったような表情を浮かべて喘ぐ彼に、身体の奥が疼く。起こして欲しい、と掠れた声でねだられ、背中に手を差し入れてぐいと起こす。さらに身体の奥へと入り込む楔に、艶の乗った声があがった。渦巻き始める熱に身体を小刻みに震わせながらまた口付けをねだる。
唇から覗く舌に、舌で触れる。寄せようとする顔を引き剥がし少しの距離を置いて舌を伸ばしてやると、焦れたように舌を伸ばして触れてきた。そのまま舌だけを互いに絡ませ、甘い感触を味わう。
焦らすだけ焦らしながら意地悪く抱いたときに必ず、こうして口付けをねだられる。何かに縋りつくように、何かを確認するかのように。
舌を絡ませる度合いをだんだんと深くしていく。ようやく唇が触れ合った瞬間、くぐもった声を零した。酷く濡れて、先をねだるような嬌声。手繰り寄せ甘噛みしきつく吸い上げながら、背筋へと手を伸ばす。項から肩甲骨へと指を滑らせたとき、あわせた唇が離れそうになるほどに、細い身体がしなった。幾度も幾度も辿ると、その度にびくびくと反応を返してくる。あまりに深い悦の所為か、目元に涙が見え始めた。
いったん唇を外して、濡れた目元に口付ける。
「…も……っと……」
甘い声。甘い吐息。本人は自覚していないだろう媚態に、身体の奥のほうから何かが競りあがって来る。喉を鳴らすオスカーの目の前で、広い肩へと腕をまわしてまた唇を寄せてきた。うっすらと瞼を開けたまま、その願いを聞き届ける。
青鈍の瞳が伏せられて一心に唇を貪る様子を見つめながら、彼の下肢で硬く張りつめるものへと手を伸ばした。
「っっあ!……ぁっ」
先端の滑らかな部分を親指できゅっと擦りあげた途端、膝の上で艶めく肢体が仰け反り高い嬌声を放った。窪みからとろとろと零れる蜜を指先で塗り広げ括れをぐるりと撫でる。動こうとする腰を片腕で確りと抱き寄せ固定し、さらに弄ぶ。紅い髪に差し込まれたままの手が引き攣ったような動きで頭を掻き抱き、目を閉じて浅く喘ぐ。
「もう、いいのか」
意地悪く聞くと、震える唇で何事か呟きながらたどたどしく首を振る。跳ねる息をどうにかして整えようとしながら、唇を近づけてくる。触れそうになった瞬間、何度も達かされて敏感になった昂ぶりを指先で弾いた。
「っや、ぁ」
またひくりと身体を戦慄かせて軽く仰け反る。後ろの蕾が、取り込んだ楔をきつく締め上げた。きり、とオスカーが唇を噛む。そのあとも、口付けようと唇を寄せるたびに、神経を剥き出しにされたような其処を弄った。その度に身体を仰け反らせながら、けれど口付けをねだり続ける。
|