微笑んだままでいて 〜 3 〜 |
ごそ、と腕の中のルヴァが身動ぎをする。肩を柔らかく抱き寄せると、そのまま無意識に寄せられる身体が嬉しくて。笑みを浮かべたまま、もう一度頬へ口付ける。 森の中で彼の心に初めて触れた日から、幾つの朝と幾つの夜が繰り返されただろう。そうして今、こうしてふたりで居られることに、深く深く感謝の意を心に刻む。 その想いが向けられるべき先は、やはり女王陛下なのだろうか。そう考えてリュミエールは苦笑した。この想いは、祝福からは遠い場所にあるのかもしれない。 そう、思いながら。 「おやすみなさい……」 限りない優しさを乗せて、耳元に囁く。無意識に微笑む彼が無性に愛しくて。暖かい何かが、心の内に満たされていくのを確かに感じる。上掛けを掛け直し、自分もゆっくりと横たわった。頬に添えていた手で、目元をするりと撫でる。 最後にひとつ額に口付けると、リュミエールは枕へ頭を下ろす。目を閉じると、暗闇の中聞こえてくるのは、彼の穏やかな吐息。 過去に傷ついた彼を癒しながら、自分もまた癒されることを待っている。 満たされる日を夢見ながら、それでもやはり想うこと。 願いはただひとつ。この頬が、二度と涙で濡れないように―――――。 了 |