光様誕生日記念すぺさる
温もりの住み処




 背後から伸びてきた掌に自身を包み込まれて、ルヴァの喉が引き攣れたような悲鳴を上げた。それすらも艶めいていて、背後からの手が施す仕業を留める力は持ち合わせていなかった。
「久しぶりだ……永い間放っておいて、すまなかったな」
「そん……な、こと…っっ…」
 返そうとする言葉すら途切れ途切れで、吐息の間に語尾が消えていく。
 緩く立てられた膝は既に笑いかけていて、とうの昔に力を失っていた。引き攣りシーツを掻く爪先に視線を流しながら、手の中の括れをきゅっと扱きあげ汗ばむ首筋に口付ける。微かな声と共に仰け反る身体を抱き締めながら、更なる弄虐を加え悦を育てていく。
「熱いな…そなたの身体は」
 首の付け根をきつく吸い上げられて、びくりと肩が戦慄く。そうしている間にも、先走りのぬめりを借りた両手が自在にルヴァの昂ぶりを弄び、高みを極めさせようと企む。
「ゃ……っジュ、リ……アス…っ」
 身体の震えが酷くなる。久しぶりに触れられた所為か、限界が早い。嬉しげに微笑むと、手の動きを早めていく。
「声を……ルヴァ…」
「ぁ…ゃっ……ジュ…リ…ぁっ」
 唇から零れる吐息が忙しなくなり、自身を弄ぶジュリアスの腕にかけられた手から、力が抜けていく。肩口にかくんと預けられるルヴァの頭、紅潮した頬に口付け、耳朶を甘噛みする。
 とろとろと蜜を零す蜜口を指先で浅く穿ち、幹を一際強く擦り上げる。
「っあ、あああっっ」
 びくん、とルヴァの身体が大きく撓り、高い声と共に絶頂を極めた。断続的に震え蜜を吐き出す昂ぶりを更に扱いて悦を長引かせる。震えがあらかた収まり荒く息を吐くルヴァを抱き締めながら、なでやかな肩口に口付けた。



 彼の蜜でぐっしょりと濡れた手で直接肌を触らないよう少し気にしながら、ルヴァの胸へと腕を回してうつ伏せにさせる。
「腕をつけるか…」
 耳元で囁かれひくりと肩を震わせながらも、言われた通り肘を寝台の上について気怠げな身体を支える。先刻の絶頂に我を忘れたままのルヴァの背中に口付けを落としながら、濡れそぼった手で細い下肢を弄る。
 片手でゆるゆると昂ぶりを扱きながら、後ろの蕾に指を沿わせる。びく、と震える腰に口付け宥めながら、ゆっくりと蜜を擦り込んでいく。
 最初は入り口を指の腹で。その次は時折爪の先を含ませながら。次第に深く指を埋め込んでいく。きつい抵抗があったのは最初だけ。以前の感覚を思い出してきたのか、徐々にやんわりと解けていく蕾。
 勝手が判らず傷付けてしまった最初のころを思い出し、慎重過ぎるほど慎重に慣らしていくジュリアス。深く差し入れた指でルヴァの中を探りながら、前と後ろから快楽を擦り込んでいく。
「あ……っぁ…っふ………ぅっ」
 与えられる悦に腕の力も抜け、屑折れた両腕に貌を埋めながらルヴァは嬌声を零す。その声に煽られて、ジュリアス自身も熱く昂ぶり始めていた。



 く、と深くジュリアスの指が奥を突く。
「っう、あぁっっ」
 高く嬌声が上がる。
 先刻一度高みを極めた昂ぶりも勢いを取り戻し、シーツの上にぱたぱたと蜜を零し始めていた。
「…ジュ…リア……ス………っも、ぉ…っ」
 次々と注ぎ込まれる悦にルヴァは涙を浮かべ、言葉少なに先を強請った。
「……大丈夫……か…」
 こくこくと頷くルヴァ。ずるりと指を引き抜き細腰を高く持ち上ると、戦慄く蕾に自身をあてがう。流石に緊張するのか、強張るルヴァの腰を掌で宥めながら、吐息の間隙を狙って一息に括れまでを含ませる。
「はっあ、あぁっっ」
 ぎゅうっとシーツを握り締めた掌が寝台の上をそのまま滑る。頭の先へ突き抜けるような強烈な感覚に息を吸うことも忘れ喘ぎながら、ルヴァの下肢はジュリアスを受け入れた。同じくジュリアスも、きつい締め付けに痺れるような快楽を味わいながら、一時動きを止めて大きく息を吐いた。
「動く……ぞ…」
 余裕を些か無くしながら呟くと、ゆっくりと深く自身を進めていく。絶え間無く紡がれる掠れた声に鼓膜すら侵されながら、焼けるような悦に思考すら委ねようとする。
 十分に与えられたぬめりの所為で引き攣ることもなく行き来を繰り返す昂ぶり、その圧倒的な質量と熱にただ思考を止めて、ルヴァは喘いだ。



 触れるところ全てが止めど無く熱く融けていくようで、ただ、互いの熱を感じあい縋り付き互いを高めあっていく。
 腕の中の確かな熱を抱き締めながら。
 自身を抱き締める腕の熱さを確かに感じながら。



 やがて、ふたりの意識は共に白い光の渦に飲み込まれていった。







 汗と蜜でぐっしょりと濡れてしまった寝台を抜け出し、まっさらな寝台へとルヴァの身体を横たえる。
「どうする……湯をつかうか…?」
 気遣って声をかけるジュリアスの声に応えるように重い瞼をあげて、ルヴァが微笑う。
「明日の……朝、で…いいです……」
 傍に、居てください……、と小さく呟くルヴァの隣に身体を横たえ、上掛けを引き上げながら、未だ紅潮の治まらない頬に口付けた。
「……愛している…」
 低く囁く声に、ゆるりと微笑み擽ったげに肩を竦めながら、ルヴァは薄く目を開いた。ゆっくりと腕を持ち上げて、ジュリアスの肩へと伸ばす。引き寄せられるまま貌を寄せ、ルヴァの貌を覗き込む。
「私も……」
 愛しています、という呟きと共に、ふたりの唇が重なっていく。



 離し難い、それが無くては生きていけないほどに大切な温もりの住み処を互いに抱き締めながら、ふたりはゆっくりと瞳を閉じた。
 部屋に安らかな吐息が齎されるのは、もう直ぐのこと。



 きっと誰も知らない、ふたりしか知らない、温もりの住み処。





<了>






御品書