2000/02/10・UP
DARK BLOOD
〜 1 〜
清一色×八戒


 なんとなく肌寒さを感じて、ふと、意識が眠りの海原から浮上する。

 身体にかけていた筈の上掛けの感触が無い。服は……着ている。辺りが暗過ぎて何

も見えないが、触覚でそれだけは判別できた。

 直ぐ傍で一緒に眠っていた筈の、ジープの気配も無い。




 次の瞬間、違和感に気付く。

 身体が動かない。

 脚も、腕も、頭すら動かせない。痺れたように、なにかに固定されているかのように、

全く動かせなかった。

 ふと気付くと背中にひんやりとした感触。衣服がほんの少し湿っているような気がす

る辺り、もしかすると土の上に寝かされているのかもしれない。




 宿屋に泊まっていた筈。なのに、何故。寝ている間不覚にも刺客に襲われ何処かに

拉致されたのか。

 そこまで考えて、はっ、と、他の3人の安否を想う。

 自分は置いて、まず他人のことを気遣うところが彼の彼たる所以。




 『贖罪』か、『悔恨』か。




 辺りに何者かの気配がするかと神経を研ぎ澄ませてはみるけれど、徒労に終わる。

なんの気配もない。『生』の匂いの一切しない場所。

「捕まってしまいましたか」

 頭の中で想ったつもりが、言葉になって口から零れた。声が出せると想っていなかっ

た為、碧の瞳が軽い驚きに開かれる。

 触覚と声は、自由になることが判った。目だけを動かして見えない闇をもう一度探る。




「気分のほうは、如何ですかねぇ?」




 突然響いた声に、心臓を鷲掴みにされる。強張った視線を気取られないように流し

て、声の聞こえた方向に神経を集中する。どうやら聴覚も無事らしい。

「何方、ですか?」

 頭に直接響くようなその声からは、居場所の特定が困難。聞いたことのあるような、

ないような、声。にこりと微笑って問うてみる。

「つれないですね……つい先日も御逢いしましたのに」

 今度は耳元で声がする。囁くような声。

「会った……?」

 言葉を口のなかで反駁する。先刻とは反対側の耳元で、また声が響いた。

「ほら……貴方の旅の行く先を占って差し上げた、清一色、ですよ…?」

「…っ…!」

 脳裏で、数日前の光景が像を結ぶ。活気に溢れた街の一部を廃墟に変えた出来事。

その街で出会った、怪しげな易者。

 固まる視線の先に、ぼうっとなにかが浮かび上がる。



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バレンタインカウントダウン ☆ 清一色から八戒へ / 『狂愛』 を込めて