DARK BLOOD 〜 7 〜 |
清一色×八戒 |
傷痕を弄るように暫く爪の先で引掻いていた一色が、咥えていた点棒を手に取ってひ たりとその傷痕に当てると、一気に腕を真横に振り抜いた。 「…が…っっ」 見た目にも判る傷痕に、添うように新たな傷が残される。血に濡れた点棒を舐めなが ら、にぃっと嘲笑った。 「貴方を、手に入れたい」 切っ先を傷口に当ててぐっと押し込める。肉の裂ける感触と溢れ出る血の芳香、半分 以上を傷口に埋没させると、ふわりと融けて同化した。顔を下ろすと熱を持った切り口 に唇を落とし、ちゅ、と吸い上げる。 「っあ、あ」 びくん、と仰け反る肢体を撫でて、更にちゅくちゅくと傷口を舌で舐り血を啜った。 ワタシ 「貴方から全てを奪って、我だけのものにしたいんですよ」 激痛に目を見開き声も出せず喘ぐ八戒の貌を、血に濡れた口元を手の甲で拭いなが らじぃっと見詰める。 身を乗り出して、苦痛に喘ぐ碧玉を覗き込みながら、追い討ちをかけるように腹部の 傷を抉った。 「城中の牢の前で貴方を見つけたとき……」 滑る血と温かい肉の感触を楽しむように、幾度も指で辿り爪を立てる。 「貴方が見せた虚ろな瞳と殺気に、興味を覚えました」 ぶり返す激痛に、八戒の身体が大きく撓る。 「剣で軽く薙ぎ払ったら…貴方はまともにそれを喰らって、酷い傷を負った」 ぐちゅ、と親指を沈めると新たな鮮血が湧き上がり、手を濡らしていく。笑みを深め喉 を鳴らすと、首を伸ばして頬に口付けながら続ける。 「この傷ですよねェ……これが致命傷になって、絶命しかけましたっけ」 びくびくと肢体を引き攣らせながら、それでも頬に唇を寄せる一色を睨みつける。そん なささやかな抵抗も、彼を喜ばせる結果にしかならない。 ワタシ ワタシ 「そして、我は……貴方に我の血を贈った。只の思いつきでしたが、あれは……我なが ら、なかなか好い思いつきだったと想っているんですよ」 耳朶をきり、と噛む。ひく、と動いた頤を撫でて、残った紅い痕に舌を這わせた。背筋 に走る痺れに碧の瞳が潤む。息を吹き込むように、低くゆっくりと台詞を紡いでいく。 ワタシ 「我の血を受けて、貴方が、貴方の姉を犯した妖怪の仲間になった……その刹那に、 立ち会うことができたのですから」 耳鳴りのように、鼓動がやけに大きく聞こえる。それを突き抜けるように鼓膜へ届く、 心底嬉しそうな一色の声。 |