2000/03/21・UP
FAKE
〜 2 〜
清一色×八戒


 距離が縮まる。少しづつ、少しづつ。視線を絡めたまま、触れあう唇。

「……っ…」

 吐息が混ざる。相変わらずの柔らかい感触と、温もり。更に目を細めて深く口付けた。

上昇する身体の熱、あがる鼓動。甘い蜜に神経がくらりとぶれて、眩暈に溺れそうにな

る。

 肩にかかる手を取って指を絡めるとそのまま寝台に押し付けて、唇を開放する。妙に

甘い吐息に意識が蕩けて、凶暴な衝動に駆られていく。

 片手を外して、襟元に手をかける。紐を解いて胸元をはだけ、手の平を滑りこませる。

粟立つ肌を弄りながら、先刻押し付けられたときのままの形で動きを止めている八戒の

右腕に視線を流した。

「どうか……しましたか」

 上がり始めた吐息を纏った声が響く。それを一旦無視して、割り広げられた胸元に唇

を寄せ尖り始めた胸の飾りを含む。ひくり、と戦慄いた肢体を値踏みするような視線で

眺めながら、一色はくすりと嗤った。

「先回といい、今日といい………妙に、大人しいですネ」

「……べつ、に」

 再度、胸を啄ばまれて息を詰まらせる。
 
                 ワタシ
「その気になれば、我なんて簡単に跳ね除けられるでしょうに」

 抑揚の欠落した台詞。色の変わった瞳をじっと見詰めながら、薄く嗤う。

「この間なんて、気を失う直前、笑ってましたデショ」

「…嘘……で、すっ」

 碧に走る動揺を抉るように見詰め、笑みを深める。

「本当のコトですよ」

 視線を受け止めきれず貌を逸らしてしまう八戒の下肢へと手を伸ばす。く、と握りこま

れて、肢体は極素直な反応を示した。自由な右手がシーツをぎゅっと握り締め、細かく

震え始める。

「……先日のように、その手、縛めて差し上げましょうか」

 シーツを握る手に力が篭る。





 頬を胸に寄せたまま、下肢に伸ばした手を遊ばせる。唇を噛む気配。喉の奥で密や

かに嘲笑うと手を引いて、八戒の両手首を掴み直した。

「何を考えているんです?」

 捕えた手首を片手で押さえ込み、もう片方の手で背けられている頤を掴み正面を向

かせる。

「何も……」

「それこそ『嘘』ですネ」

 再び重ねられた唇、長い舌に口腔を弄られて、またくらりと眩暈を覚える。





 跳ね除けようと思えば。彼が『望』めば、いくらでも逃れる術はある。

 それなのに、縛られるまま、蹂躙されるまま、好きにさせている本当の『理由』。





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