2007.04.10 UP
〜 10000HIT記念・第3弾 〜

終わらない夢
〜2〜


「なに…をっ」
「達くのが厭だと言うから、止めて差し上げようかと」
 さらりと言ってのけた男は、幾らか硬さを保ったままの幹を紐の余った部分で絡めとるようにして、更に縛めていく。
「ちが―――っや、め……はず…せ…っ!」
「ダメですよ、暴れては。―――ちゃんと、縛って差し上げますから」
 男の弄虐に抗おうとする青年は、しかし、床から伸びる鎖に四肢を絡め取られていて、大した抵抗は出来なかった。もっとも、既に幾度も達かされた身体では、たとえ四肢を戒められていなくとも何も出来なかっただろうが。
 程なく紐は結び留められた。簡単に吐精出来ない仕掛けを施された青年は、下肢に感じる圧迫感にきつく下唇を噛み締める。
 男は満足げに目を細め、紐できつく縛められた青年の肉茎を眺めた。指の背を根元へ添え、ゆっくりと撫で上げていく。その感触に青年の膝がひくりと震え、紐を纏った肉茎が僅かに身を反らした。
「……これで、安心して悦くなってください、ね」
 男は囁くようにそう言うと、青年の身体を抱え直してその後孔から己の肉茎を引き摺り出し始めた。殊更ゆっくりと引き抜かれていく肉茎を引き止めるように、青年の括約筋が半ば反射的に締め付ける。深く咥え込まされ突き上げられている時とは違う、内壁全体をじりじりと燻られていくような感覚が、青年を襲う。
 一番太くなっている先端のエラが後孔の入り口に引っ掛かったところで、動きが止まる。僅かに緩まった刺激に青年が浅く息をつき、刺激に緊張していた身体が緩んだその瞬間、男は動いた。
「―――――ッッ!!」
 両腕で持ち上げていた青年の身体を、男は己が膝の上へと一気に落とした。後孔を深く抉られ鋭く突き上げられて、青年は声を失くし、後孔で男の肉茎を強く締め付けてしまう。眩む程の快楽に、しなやかな身体が弓のように撓る。それを見上げる男の貌へ、愉悦の色が僅かに浮かんだ。
 声を洩らさぬようにときつく唇を噛み締める青年の横顔へ、男が口付ける。そのまま唇を首筋へ滑らせ、青年の肌へ歯を立てた。柔らかい痛みに青年の背筋が震える。
 男は、紐で縛めた青年の肉茎を避けるようにして、汗ばむ肌を弄った。円を描くようにして腰を揺らし、青年の肉茎が蜜を吐く場所を丹念に擦り上げて、快楽を誘う。知り尽くされた身体は簡単に愉悦を生み、縛めを食い込ませるほどに青年の肉茎が張り詰めていく。身体の内から溢れる蜜が、出口とは呼べぬほどに僅かな隙間からじわりと滲み出した。
 青年の身の内で膨れ上がる快楽は、けれどはっきりとした出口を見付けられずに、青年の意識を焼いていく。
 太腿を撫で脇腹を辿った男の手の平が、青年の胸許へ行き着く。愉悦に小さく尖る乳首を長く伸びた爪の先で悪戯に弄び、指の腹で押し潰すように捏ねる。肩をびくりと戦慄かせた青年が、きつく噛み締めていた唇を解き、もどかしげに熱い息を吐いた。潤み始めた目許を揺らして、青年が微かにかぶりを振る。
 その仕草に気付いた男は、快楽を煽る手は止めずに、青年の耳許へ唇を寄せた。
「どう―――しました」
 意識に染みていくような声に目眩を覚え、青年は息を呑む。零れそうになる声を呑み込んで耐え、籠る息を吐いて、けれどまだ抗う意識が残っているのか、問いかけには応えずにただかぶりを振った。その姿に男の目がすうと細められ、唇が笑みの形に歪む。
「もっと、欲しいんですね」
 言うと、男は青年の腰へと手の平を滑らせた。数年前男が青年につけた傷跡を指先で探り当てて、いとおしげに撫でる。親指の腹をぐいと押し付け傷跡を捏ねるようにして触れると、また青年はかぶりを振り、微かに呻き声を洩らした。
「もう一度、抉られたい。―――違いますか」
 言うなり、爪の縁を宛がい、軽く喰い込ませる。男の台詞と傷へ触れる硬い感触に青年の後孔がぎちりと収斂し、その身体に燻る愉悦を男へ伝えた。判りやすいその反応に、男はくつくつと声を洩らして嗤う。
「現在を忘れるための愉悦と、過去を清算する痛みと。両方欲しいなんて、贅沢ですねェ」
 謳うように男は言い、苦しげに眉を顰める青年の首筋をねっとりと舐め上げた。
「欲しいなら、強請って構わないんですよ」
 台詞と共に、男の爪が青年の肌へと喰い込み始める。じわりと加わっていく圧力に、青年の喉がひくりと鳴った。


BACK NEXT
TOP