「達きたいですか?」
問いを耳にした途端、愉悦を濃く纏う三蔵の顔に険が刻まれた。やはりそうきた、と喉奥に笑みを転がしながら、三蔵、と重ねて名を呼び、ぐ、と強く腰を揺すり上げる。
「―――、ぁ…ッ」
「キス、してくれませんか。…こんなになってて、また、達きたいでしょう?」
そう言うと、僕の頭を抱える格好で身体を震わせていた三蔵に、あの強かな視線でまた睨まれた。目許にさす紅が大分濃くなっている。そんな状態でも簡単には流されまいと怒気を向けながら、けれど愉悦にも苛まれている姿に、背筋がぞくりと震えた。
視線を合わせたまま、動く気配の無い身体を突き上げる。僕の髪に触れている手の平に力が籠り、湧き上がる快楽に膝の上の身体がびくりと跳ねた。重ねて、下腹に着く程反り返った昂ぶりの括れを指の背で擽るように撫で、蜜を零し続ける割れ目の周囲を焦らすように突く。
「っ、……は…」
快楽に侵食され薄らいでいく怒気に目を細め、力なく左右に揺らされた顔を見上げる。
「三蔵」
汗ばんだ頬へ唇を寄せて催促する風に囁くと、目の前の喉がこくりと鳴った。僅かな逡巡の後ぎこちなく顔が寄せられ、彼の唇が僕の額に触れる。伝う熱に頬が緩んだ。が、こういう風にはぐらかされるのは面白くない。
「そこじゃないですよ」
判ってるでしょう? という風ににっこり笑って見せると、幾分か険の薄まっていた顔が今度は不満気に歪んだ。下肢を弄る手の動きは止めず、再度促すように少しだけ強く身体を突き上げる。ひくりと跳ねた身体をぶるっと震わせて、三蔵が熱の籠った息を吐いた。
「我侭な…奴、だ」
納得できないが仕方ない、といった口調で呟いた三蔵が、眉根を顰めたまま顔を寄せてきた。唇に唇が触れる。微かな痺れめいたものが触れ合った箇所から伝い、背筋を伝い降りていくのが判った。交わす吐息が酷く甘い。
淡く触れる唇へ舌を伸ばし、深く重ねようと誘いを向ける。それに喉を鳴らし躊躇いがちに応じた熱い唇を舌先で撫で、その奥で震える舌を探り当てようと頤を反らした。咥内を深く探ると、肩に触れる三蔵の腕が僕の身体を僅かに押し返そうとする。その度に直ぐ力を抜き、けれどまた深く探られて身体を強張らせる、その仕草が堪らない。
溢れる唾液を呑み込み、逃げる舌を追いかける。漸く捉えると、静電気が軽く走るような感覚に襲われた。柔らかく歯を立てて軽く吸うと三蔵の肩がひくりと跳ね、更に締め付けてくる内壁に思わず息を詰める。
身体の奥から自然と湧いてくる笑みを口許に敷き、濡れた音を立てて唇を離す。少し呆とした瞳を揺らして荒く息をつく姿を見上げ、視線を絡ませた。
「よくできました」
子供に向けるような台詞と共に、繋がった箇所を強く突き上げる。
「―――――ッ!」
焦らされた身体には過ぎた愉悦だろう、三蔵の身体が引き攣るように跳ねて仰け反った。
「一緒、に、達きましょう…?」
堰を切り溢れる衝動のまま、熱い身体を強く深く貪っていく。いつものように唇を噛み締めている三蔵の口許へ手を伸ばし、唇を一撫でした。意地を張る姿が次第に崩れていく、その様を見るのが愉しみになっている。そんな自分を喉奥で笑い、屹立する三蔵の昂ぶりを手の平で再度包み込み、強く擦り上げた。
「―――ッだ、……あ・ア…っ!」
先走りを零し張り詰めきっていた昂ぶりが、手の中でびくりと跳ねる。僕の頭を抱えている手に力が籠る。
戦慄く身体に煽られ思考が蕩けていく感覚を味わいながら、突き上げる動きと昂ぶりを扱く手の動きを同調させて、一気に頂点へと押し上げていく。絶え間なく湧き上がる愉悦に歯の根が合わなくなり始めた三蔵の頬へ己が頬を寄せ、汗ばんだ肌に口付ける。
「…声、聞かせて…ください」
言葉を拒否するように左右へと首を振る所作もどこか力無い。蜜に塗れた幹を手の平が擦る濡れた音が、次第に大きくなっていく。
「我慢しないで…僕に、聞かせて」
「ッく、…馬鹿、や……ァ、ああ…っ」
溢れ出した嬌声にも煽られて、加減が出来なくなっていく。ぬち、と音を立てて昂ぶりを根元から強く扱いた手で、濡れる蜜口をきつく抉る。その刺激に耐えかねて跳ねた身体をすかさず強く突き上げると、三蔵の声が弾けた。
「っは、ァ……あああっっ!!」
「…さん、ぞ…っ」
喉を晒し仰け反る身体をがくがくと震わせる三蔵が、胸元を白濁で染めていく。一際強く収斂した内壁が齎す快楽に抗う術は無かった。跳ねる身体を強く抱き締め矢継ぎ早に幾度か奥を穿った後、繋がった身体の奥深くへ白濁を吐き出す。体内に感じる新たな熱に三蔵の身体が幾度かまた跳ね、追い討ちのように自身を絞られて、思わず低く呻く。
白濁を全て注ぎ終えるとほぼ同時にふらりと倒れ込んできた三蔵の身体を、僕は両腕で確りと抱き止めた。
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