熱 帯 夜 〜おまけ〜 |
遠矢 |
「……ルヴァ……」 口付けを次第に深めていきながら、ゼフェルはゆっくりとルヴァをベッドに押し倒していった。 甘やかな吐息をもすべて絡めとるかのように、深く深く、唇を合わせていく。 つくん、と身体の奥が甘く疼いた。 来ていたTシャツは脱ぎ捨ててしまっている。まだ多分に少年のしなやかさを持つその背に、ルヴァの腕がそっと伸ばされてくる。目を閉じてうっとりとゼフェルの口付けを受けるルヴァのその表情を、ゼフェルは目を細めて見つめていた。 愛しくて、たまらない。 蒼く深い髪を何度も梳きながら、ゼフェルはルヴァを味わう。 「んっ……ぁ…ん……」 甘く溶けはじめた声に、ゼフェルはいつも煽られてしまう。たっぷりと蜜を交換し合った後、ゼフェルは次の行為に移った。 いつもは硬く合わさった襟元を寛げることから始めるのだが、今日は違う。緩やかな襟元からは、白い肌がのぞいていた。ほんのりと、桜色に上気している。 「痕……つけても、いい?」 露な喉から鎖骨に指を這わせ、滑らかな感触を楽しみながら、そっと囁く。この綺麗な人が自分だけのものなのだと、もっと感じたかった。 かぁ、と紅くなったルヴァはわずかに視線を逸らし、それでもこくっと頷いた。 ルヴァの膝を割って身体を滑りこませる。唇からはじまり、あちこちに軽く口付けてから、柔らかな喉を少し強く吸う。びくっと仰け反った喉元に、紅い痕をつける。鎖骨に舌を這わせ、窪みをくすぐる。襟からのぞく肌に、ゼフェルは幾つも幾つも花弁を散らせた。 甘い甘い、声。ゼフェルの背に回る腕に力がこもっていき、緩やかな悦を伝える。 上衣を抑えていた腰紐を解き、その裾から手を忍ばせる。滑らかな肌を撫であげて、胸をくすぐる。 身体中が溶けてしまいそうだった。 「ぁ……ゼ、フェル……っ…」 ゼフェルの愛撫に応えて立ち上がる飾りを指先で捏ね上げる。空いた片手でルヴァの下肢に触れると、びくん、と身体が震えた。 相変わらず胸元に口付けを降らせながら、緩やかな刺激を与える。 「ゼ、ゼフェルっ……は、っ……」 ゆるゆると、焦れたようにルヴァが首を振った。薄く開いた瞳がわずかに潤む。 「ルヴァ…して欲しいことがあったら、ちゃんと言えよ?」 意地悪な言葉を囁きながらも、ゼフェルもルヴァに煽られていく。 ゼフェルに応えて艶やかな色香を上らせる肌。こんなルヴァの姿を見ることが出来るのは、ゼフェルだけ。この甘い声を聞けるのもゼフェルだけ。 「……他のヤツラの前で、こんな服……着るんじゃねーぞ」 暑苦しいとか、散々文句を言ったのはゼフェルのくせして、ついつい勝手なことを言ってしまう。 「着、ませんよ…恥ずかしい……」 柔らかく喘ぎながら、ルヴァが応える。うっすらと滲んだ涙を、ゼフェルの唇が吸い取った。 ルヴァの背に手を差し入れてわずかに身体を浮かせると、たくし上げた上衣を脱がせてしまう。ぱさ、と軽い衣擦れの音とともに衣服が床に落ちた。 下衣に手をかけると、ルヴァはわずかに身体を強張らせて、顔を覆ってしまった。肌を露にする時、いつもルヴァは恥ずかしそうに顔を隠してしまう。綺麗なルヴァの顔をずっと見ていたいと思うけれど、厭がることはしたくなくて、いつもそのままにさせていた。だが、今日は、どうしてもルヴァの顔を見ていたかった。 「ルヴァ、顔かくさねーで。ちゃんとオレを見てろよ」 片手を下衣にかけたまま、耳元で囁く。真っ赤な顔で、それでもルヴァが覆っていた手を外した。ぱた、と軽い音を立てて、力の抜けたルヴァの両手が、シーツの上に落ちる。 どうしてこんなに愛しいのか、わからない。 孤独に震えた心を癒してくれたこの人を、ただ抱き締めたかった。 「ルヴァ、愛してる…」 夜に包まれて、二つの影が、重なった。 ……偶にはこんな暑い夜も、いいかもしれない。 Fin |