ささやかで和やかな晩餐が終わり、帰路の途中。 「少し酔ってしまったですかねぇ」 ほんのりと紅い頬を擦りながらほうっと息をつく。 御殿を辞し対の宮を抜けると広い庭に出る。空には無数の星が煌き、時折顔を覗かせる月の光が地上に微かな影を落とした。 「綺麗な月ですね……」 空を見上げながら、酔いの所為で熱くなっている吐息をひとつ零す。ひんやりとした夜気を吸い込みながら、地慧は辺りをぐるりと見渡した。