七夕の戀




 やはり光華に見せに行こうと思いたち、地慧は踵を返してもうひとつの宮に向かった。
 豪奢な扉の前に立ち、すうっと息を吸い込む。
「あの〜、光華、いらっしゃいますか?」
 開いている、と静かな声が返ってきた。口元を綻ばせて扉をくぐり慣れたように奥へと足を運ぶと、目も眩むような金の髪が目に飛び込んできた。



「地慧か。…もう終わったのか?」
 手にしていた筆を置き、存外柔らかな微笑みを返す。
「出来上がったら見せに行くと、約束していましたでしょう?」
 にっこりと微笑って手にした織物を広げてみせる。切れ長の瞳がきゅっと細まり、感嘆の笑みが口元に零れた。かたんと椅子から立ち上がり、長い髪を揺らしながら近付いて手を触れさせる。滑らかな肌触りと艶やかな布目に笑みが深まった。
「やはり地慧の織物が一番好い」
 手放しの賛辞に、照れたように青鈍が揺れた。
「正装の肩掛けにして届けさせますね」
 手元に返された布を畳みながら地慧が言い添える。その言葉に頷きながら、ふと光華が表情を変えた。右肩を僅かに下げて首を傾げながら、左腕を軽く開く。
「内々の晩餐会があるのだが、一緒に行かないか」
 此処暫く機織にかかりきりだったから、久しぶりだろう?と光華の優しげな瞳が揺れた。










≪晩餐会に行く≫         ≪辞退して帰る≫









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