七夕の戀




 暫く考えてから、地慧は軽く首を左右に振った。
「やっぱり、今日は帰ります」
「そ、っか…」
 此処暫く機織で篭りっきりだったもんねぇ、と些か残念そうに肩を竦める夢貴に、地慧は申し訳なさそうに微笑った。
「それに、明日は待ちに待った日だし?」
 綺麗に整えられた眉を上げ、茶化すようににっこりと微笑む。途端にかあぁっと貌を真っ赤にする少し年上の彼を、夢貴は面白そうに眺めた。
「今度は誘われてよね?」
「ええ、是非」
 まだ紅い貌でにこりと微笑うと、地慧は夢貴と分かれて自分の宮へと足を向けた。





 暫く歩くと、広がる庭の向こう、薄闇にうっすらと地慧の宮の影が浮かび上がった。
 ふわりと頬を撫でる風に誘われるかの如く、青鈍の瞳が揺れる。向けられた視線の先には、宮の裏手へと続く道が伸びていた。










≪裏庭の池に行ってみる≫         ≪真っ直ぐ部屋へ帰る≫









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