さく、さく、と静かに響く、踏締める草の乾いた音。ひとり分のそれがやけに寂しくて、また地慧の瞳が濡れる。 大きな門を無言で潜る。気遣わしげな衛士の視線にも返す気力がなく、そのまま歩を進めた。薄闇の中に己の宮の屋根を見つけた時、なにか、耳に届く微かな音に気付いて足を止めた。